姫恋歌〜姫恋ひ歌〜



緑の秘する水辺にて
淑やかに咲く華二つ

睡蓮を愛でる
涙の少女

歌に返した微笑みは
戦場を知らぬあどけなさ

幾度も呪った皮肉な偶然
少女が『誰』かを知る己

“許されざるは惹かれる心”
この血に宿る祖の声か

閉ざされた城の姫君よ
今一度貴女に会えるなら
詩人は想いを音に乗せ
言葉に隠して捧げよう

『故郷にて待つ恋人よ〔そこに貴女はいないのに〕
私の名を呼ぶ君の声〔記憶はときに残酷で〕
愛しさを胸に帰途につく〔私は城を去るけれど〕

―――たとえ異国の地にあれど
かの人の孤独を癒すよう
想いを運べ 宵の風―――』

止められなかった争いが
幾万の命を奪う戦いが
別れのその夜始まった



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